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eyes to me~ 私を見て
第66章 eyes to me~私を見て

「七時二十五分か……」
智也はふと、腕時計を見た。
もう、プリキーの演奏は始まっているだろう。今日の終演のリミットは八時三十分だ。
「そういえば!美名ちゃんに綾波君の無事を伝えたの?」
堺の首根っこを持ったまま、ペコが思い出した様に叫んだ。
「ああ……バタバタしてて連絡してないな」
スマホを取る智也に、綾波は首を振る。
「……いきなり現れて、驚かせたい」
「ええ――!?美名ちゃんがどれだけ心配してると思ってるの――?
取りあえず声を聞かせてあげなさいよっ」
ペコが頬を膨らませて咎めた。
綾波は、街中を走る車のテールランプの灯りの群れを見て、美名が浴びているだろう、スポットライトを想像する。
あの澄みきった甘やかな声で人々を酔わせ、賞賛の歓声の中にいる、ただひとりの歌姫を。
(美名――今から、そこへ行く――)
「ビックリした可愛い顔を……見たいんだよ」

