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eyes to me~ 私を見て
第3章 奪われた歌姫
「噛みつくとか……お前は……子猫か」

 耳元で溜め息混じりに囁かれ、ビクッと身体が震えた。
 噛みついて血が滲み出ている腕にそっと触れると、綾波が戸惑っているのが伝わってきた。

「ごめん、なさい……私……」

 唇が震えた。
 人を叩いたり、殴ったりした事なんかない。
 暴力なんか大嫌いなのに。
 今日の出来事が走馬灯の様に甦る。

 ――路上で歌っていたらスカウトされて舞い上がって、でもそれは私を騙そうとした手口で――
 綾波はあの男から助けてくれたのに、私はこんな事を……
 思うように行かない苛々を、彼にぶつけてしまった様な気がする。

 ――今まで騙されて来たのだって、私がもっとしっかりしていれば……

 自分がとてつもなく小さく、愚かに思えて泣けてきた。


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