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eyes to me~ 私を見て
第19章 桃子とふたりの王子
振り返ると、いつの間に起き出したのだろうか。
桃子がコップの水を持って、差し出してきた。
「飲める?」
三広は、桃子を見つめながら無言で水を受け取り、口に含むが、むせてしまう。
「ああ、大変」
桃子の手が懸命に三広の背中をさすり、咳を収めようとした。
――そうか……この手が、ずっと擦ってくれてたんだ……
咳き込みながら三広は考えた。
桃子は、もう眼鏡を嵌めていた。
最初見た時は正直、珍妙な娘としか思えなかったが、今は、女神に思える。
「大丈夫……?鼻血止まったみたいだね」
「……」
桃子は三広の鼻に入っているこより状のティッシュを抜き取ると、それを大事そうに持って何やらモジモジしている。
その様子が三広の心をざわつかせた。
「あ、あのう。このティッシュ、貰っていいですか?
……き、記念に……圧縮密封して、か、家宝にしたいの!……だ、ダメですか?」
赤くなりながらゴニョゴニョ呟く桃子を、いつの間にか三広は抱き締めていた。
ひっつめた髪の後れ毛が、頬をくすぐる。
桃子が息を呑むのが分かると、三広は小さく呟いた。
「ゴメン……少しだけ……このまま……」