この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
eyes to me~ 私を見て
第29章 優しい獣の腕の中で
美名は、自分が驚く程の平坦な声で呟いていた。
綾波が何か言おうと口を開いた時、被せるように訊ねた。
「”ほなみ”って……誰?……綾波さんの何なの?」
「美名……それは」
こんなに歯切れの良くない彼を初めて見る。
美名の中で、今までの甘い思い出がガラガラと崩れて行くのを止められない。
「私を初めて抱いた時……あなたは……間違えてその名前を呼んだの……」
「――!」
綾波の瞳が激しく揺れたのを見て、美名は無性に可笑しくなって笑い出した。
「……ふふ……ふっ……私……やっぱり馬鹿なのかな……」
「美名――」
笑いと共に涙が溢れて止まらない。
「甘い言葉を囁かれてすぐにいい気になって騙されて……っ……ふふ……あははは!」
泣きながらシーツを身体に巻き付けて立ち上がると、腕を掴まれた。
「美名……話を聞いてくれ……”ほなみ”は」
「――”ほなみ”の話なんて聞きたくない!」
「美名!」
「……綾波さんなんか、大嫌い!」
渾身の力で腕を振り払い、美名は屋根裏から逃げた。