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eyes to me~ 私を見て
第29章 優しい獣の腕の中で
何処をどうして歩いたのか記憶が無い。
シーツを被り引き摺りながら、いつの間にか一階の部屋に来ていた。
そっとドアを開けると、二段ベッドの下で桃子と三広が重なり合っているのが見え、慌てて静かに閉じる。
美名は思わず溜め息をついた。
(良かったね……桃子。
みっちゃんの事、凄く憧れてたもんね……)
あの奥手で頑なな、でも優しい妹が初めて恋を掴んだ事を心から嬉しいと思う半面、とてつもない寂しさが襲い、再び目の奥から熱い涙が呼び覚まされる。
「……どこで寝よう……」
美名は途方に暮れてドアの前に座り込んだ。
すると足音と衣擦れの音がする。
(綾波さんが追ってきた?)
と身構えた。
足音が止まると、何秒間かして間延びした声がした。
「桃子といいお前といい……脅かすんじゃねえよ!ホラーキャンペーンか何かか?」
美名は涙を隠そうともせず顔を上げた。
「真理……くん……」