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eyes to me~ 私を見て
第29章 優しい獣の腕の中で
スゥエットを着た姿を見て、真理はプッと吹き出した。
腕が余って、足は平安時代の貴族みたいにズルズル引き摺っている。
「服が歩いてるみたいだな」
真理がクスクス笑うので、美名もつられた。
袖をクルクルと折ってやっていたが、ふと胸元に目がいってしまい、慌てて美名から離れた。
サイズが大きくて、首回りがかなり空いていて鎖骨の下の膨らみが、少しでも屈んだりすると見えてしまうのだ。
「真理君……?」
「さあ!トランプか?ウノか?神経衰弱かな?わはは!」
真理はおどけて言ったが、背中を向けて美名と目を合わさない。
「……綾波さんが……」
「?奴が……なんだよ」
「……っ」
何かを言おうとするが、嗚咽が漏れてどうしても話せない。
また涙が溢れて美名は困惑した。
真理の目が真剣になる。
「奴に……泣かされたのか?」
「……っ……」
美名の瞳が瞬きするとポロリとまた美しい涙が生まれた。
真理の胸がキリキリと痛んだ。
美名が再び肩を震わせた時、強く抱き締めていた。