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第29章 優しい獣の腕の中で

　他の女を思いながら、愛を囁いて好きなだけ抱いて……
　
『美名……愛している』

｢……っ｣

　声を思い出すだけで、身体の中身を引きずり出されたのでは無いかと思う激痛に襲われる。
　綾波の笑う顔ーー涼やかな、でも時おり激しく揺れる瞳、髪を撫でた長い指に、好きなだけ甘やかしてくれた胸。
　あれがすべて嘘だったなんて。

｢酷い……っ｣

　美名は、思わず呻いた。
　昨日枯れるまで涙を流した筈なのに、彼を思い出しただけでまた新しく塩気を含む水が目から産み出される。

｢酷いっ……私は……本当にっ……うっ｣

　真理に抱き締められ、唇を奪われた。

｢んっ……ん｣

　優しい動きで中をゆっくりと掻き回す真理のキスに身を任せて居ると、真理が不意に唇を離して強い眼差しで見つめてきた。