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第5章 溺れる歌姫

｢お前は……どれだけ俺を挑発する｣
｢えっ……｣

　顎を乱暴に掴まれて唇を塞がれる。
　彼は、キスしながら美名の両腕を一纏めに掴み、左手で器用にネクタイを取り上着を脱ぎ放り投げた。

(今日は、ハンガーに掛けないんだ……)

　激しく甘く責める口付けに翻弄されながらぼんやりそう思った。

｢厭らしい身体だな……｣

　綾波は、唇を離すと、美名の身体を上から下まで眺める。
　身体を隠したくても両腕を拘束されていて出来ない。
　綾波の左手が、ゆっくりと薄い生地の上を這って行き、肩から鎖骨の辺りをなぞり、胸元へと手が滑ると、ビクリと身体が跳ねる。
　綾波の長い人差し指が乳首の廻りをつつ、となぞると、身悶えてしまう。