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eyes to me~ 私を見て
第30章 さよなら、愛しい獣
「……!」

 美名が息を呑んだのに真理が気づき、庇う様に肩を抱いた。
 今日の綾波は、グレーのシャツに紺のネクタイがとても様になっていた。
 優雅な足取りで二人に近付くと、切れ長の目元が少しつり上がる。
 真理の美名の肩を抱く指に、力が籠った。
 

 ーーもう、忘れよう、諦めようと決めたのに……
 
 美名は綾波の姿と仕草に目と心を奪われてしまっていた。
 心臓は高鳴り、心が騒ぐ。

(……けれど、彼は私を愛していない……)

 唇を噛み、下を向くと、綾波の指が顎に触れて上を向かされた。
 目の前に鋭い瞳があって、苦しい程ドキドキする。

「美名に触るな!」

 真理が美名をギュッと抱き締めて綾波から離す。

(……綾波さん……)

 美名は、真理に抱き締められながら、さっきまで触れられていた感触をいとおしく思った。
 獣の様な瞳が、二人をなめ回す様に眺めると、形の良い唇から残酷な言葉が放たれた。

「そうか……お前ら、そういう事か。
 もうその女には飽きた所だ。
 丁度いいタイミングだったな」

 身体中から熱が引いていく。

(綾波さん……一体、何を言っているの?)



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