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eyes to me~ 私を見て
第32章 新しい恋と、忘れられない恋と
綾波が向かったのは、志村のスタジオだった。
前回ここに来た時には美名が一緒だった。
志村を待っている間、我慢が出来なくて抱き合ってしまった事を思い出す。
スタジオの中はしんとしていて、志村の姿はまだない。
ピアノの前に腰かけて蓋を開けると鍵盤が現れる。
――弾いていると、いつも美名は目を輝かせて側に来て歌った……
『剛さんの弾いている姿が好き』
と言って、俺がピアノの前に居るとずっと側から離れなかった。
色んな曲を美名に聴かせて、歌わせた。
ヒットチャートのポップスやらジャズからクラシックまで、どんなメロディーでも美名は楽々と鳥が囀ずる(さえずる)様に歌ってみせた。
歌う美名を側で感じていると、次第に愛しくて堪らなくなり、抱き上げてベッドまで連れていって……
「…………」
黒い蓋を閉じると、溜め息を付く。