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eyes to me~ 私を見て
第34章 蕀(いばら)を踏みしめる歌姫
溜め息が額にかかった時、身体をギュッと抱き締められた様な気がしたが、ほんの一瞬の出来事で、確かめる間もない。
「出来たぞ」
瞼をゆっくりと開けると、綾波は満足そうな顔をしていた。
「綾波さん……あの」
「……何だ?」
(今、抱き締めてくれたの……?)
聞きたいのに、どうしても喉からその言葉が出ない。
(思い過ごしだったら……
また冷たくあしらわれたら耐えられない……)
拳を握りしめ、別の質問をした。
「何故、女の人にお化粧するのが上手なの?」
綾波は、その時見たこともない様な優しい遠い目をした。
「ある人に……子供の頃、教えてもらったんだ」
「……それって……」
その時、部屋の入り口の向こうで物凄い音と悲鳴がした。
「うわ――っ」
「?」