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eyes to me~ 私を見て
第34章 蕀(いばら)を踏みしめる歌姫
二人でいた頃には、散々甘くくすぐったい言葉を毎日囁かれていたけど、ずっとギクシャクしていた綾波の口から、そんな事を言われるとは思わなくて……
多分深い意味は無いのだろうけど、激しくときめいてしまう。
(今日の綾波さんは、雰囲気が違う、というか付き合っていた時みたいな……)
危うく勘違いしてしまいそうになる。
「あの……綾波さん」
勇気を出して切り出す。
「うん?」
「……綾波さんの、ピアノ、聞きたいです」
「……お安い御用だ」
優しく笑って、優雅な仕草で蓋を開けて長い指を低音から高音まで素早く滑らせると、鮮やかな音が生まれた。
途端に美名の目は、身体ごとその姿に吸い寄せられる。
そんな中、堺はまだフラッシュを焚いていた。