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eyes to me~ 私を見て
第34章 蕀(いばら)を踏みしめる歌姫
しなやかな指が、ゆったりと漂う様な旋律を奏でる。
美名は、綾波のすぐ隣に立ってその指が踊る様を見ていた。
何の曲かすぐにわかった……
アメリカの有名なジャズで、日本語にすると
"私を月まで連れていって"というタイトルの曲だ。
美名は自然とピアノに合わせて歌っていた。
綾波が、弾きながら時折笑みを浮かべてはこちらを見て、二人は見つめ合う。
その度に、美名の胸は喜びに震えた。
幸せな瞬間(とき)は、華やかなアルペジオで終わりを告げた。
堺が、満面の笑みで大きく拍手をした。
「――素晴らしい!……歌っている美名さんの表情も、とても良かったです!
お二人共、お見事!」
綾波は、椅子から立ち上がると恭しくお辞儀をした。