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第35章 ガラクタと歌姫と

　すっぽりと彼の腕の中に収まってしまった美名は、混乱しながらもがく。
　腕をメチャクチャに動かして胸を叩き、肩に噛みついた。

｢くっ｣

　顔を歪めた綾波にハッとして、美名は噛んだ其処に触れた。

｢ご、ごめんなさい｣

　綾波の前髪がサラリと揺れ、優しい瞳が覗いた。

｢構わん……俺は……お前に噛まれても殴られても……殺されたって文句は言えないさ｣
｢綾波さん……？｣

　美名の手を取り、口付けすると熱い眼差しを向けてくる。
　美名は首を振った。

｢そんな目で見ないで……っ｣
｢悪いか｣
｢悪いよ！バカっ！｣
｢バカか……｣

　目の前で吹き出した無邪気な顔に、胸がキュンと鳴る。