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eyes to me~ 私を見て
第42章 愛欲の塔で
淡い微睡みの中、何処からか優しい調べが聴こえる。
しなやかな指が動く度にポロン、ポロンと、頭の中へと旋律が染み渡る。
俯いているその頬には僅かに悲しみが見え隠れしていた。
(……こんなに綺麗な音を奏でているのに……何故そんな目をするの?)
「……美名……」
低くて済んだ囁きが耳を擽った。
白く霞が掛かった世界が、次第にはっきりとした色彩に変わり美名を目覚めさせる。
視界に飛び込んで来たのは……
黒い翔大の前髪と、その下から覗く深い黒曜石の様な瞳。
彼の背には青いカーテンが見えた。