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フルカラーの愛で縛って
第5章 炎
「っふは、ハ、俺と詩織は愛し合ってるんだ! 芸術で繋がってる! そうだろう、詩織!! 見つけてやった、俺は見つけてやったんだ!! だから、ほら戻ってこい!! 君が居なくなってから、俺は何も描けないんだ!!」
男の視線が庵原の背後の詩織に向いた。
途端、詩織が過呼吸のように薄い空気をヒュッと吸う音が響く。
庵原の眉が小さく動く。
「覚えてるか!! いや、忘れるはずが無いだろう!! ほら、俺達の作品だ!! 今でも、これを見ると魂が掻き立てられて滾(たぎ)って仕方ない! お前も喜んでケツを振って、俺の前で涎を垂らしていただろうが! 分かるか?! 詩織、お前の身体、お前の肌、お前の声だけが、俺の作品を昇華させる!! 詩織!! ほら!!」
男がデニムのポケットから取り出した何かを地上に一斉にばら撒いた。
それは、行為の際に男が撮影していた大量のポラロイド写真だった。
白い枠の中に囚われた詩織の裸体が、闇に染まる地面に何十枚も重なって連なった。
撒き散らしても、まだ両の手の中に残る、そのポラロイド写真を、槙野は詩織に見せつけるように突きつけては投げ捨てて「お前も喜んでいただろ!!」と声を張り上げ、夢遊病者のように一歩前に踏みだした。
庵原が一瞬顎を引き、臨戦態勢になる。
だが、妄想と現実の間で笑っている男は、そんな空気にさえ気づかず、ふと手の中の詩織の肢体に心奪われて、ふにゃりと相好を崩した。
その隙を庵原は逃さなかった。
「詩織ちゃん、これ持って」
照準を男に定めたまま、素早く1歩横に移動した庵原が、バケツを詩織に渡そうと右手を伸ばす。その右手が重力から解き放たれた瞬間、彼は左足を大きく一歩踏み出し、右手を振りかぶった。
腑抜けた男が顔を挙げた瞬間だった。鋭い音が響き、男は左頬に入ったパンチの軌道に沿って、大きく身体を仰け反らせた。
「ぐぁあああああっ!」
一瞬宙に浮いた身体が地面に落ちた瞬間、怒号のような呻き声を上げて頬を両手で抑えて身体を左右にゴロゴロと揺らしながら悶える。
その槙野の前に、散らばるポラロイド写真を踏みつけながら、庵原が冷たい怒りの表情で近寄る。
男の視線が庵原の背後の詩織に向いた。
途端、詩織が過呼吸のように薄い空気をヒュッと吸う音が響く。
庵原の眉が小さく動く。
「覚えてるか!! いや、忘れるはずが無いだろう!! ほら、俺達の作品だ!! 今でも、これを見ると魂が掻き立てられて滾(たぎ)って仕方ない! お前も喜んでケツを振って、俺の前で涎を垂らしていただろうが! 分かるか?! 詩織、お前の身体、お前の肌、お前の声だけが、俺の作品を昇華させる!! 詩織!! ほら!!」
男がデニムのポケットから取り出した何かを地上に一斉にばら撒いた。
それは、行為の際に男が撮影していた大量のポラロイド写真だった。
白い枠の中に囚われた詩織の裸体が、闇に染まる地面に何十枚も重なって連なった。
撒き散らしても、まだ両の手の中に残る、そのポラロイド写真を、槙野は詩織に見せつけるように突きつけては投げ捨てて「お前も喜んでいただろ!!」と声を張り上げ、夢遊病者のように一歩前に踏みだした。
庵原が一瞬顎を引き、臨戦態勢になる。
だが、妄想と現実の間で笑っている男は、そんな空気にさえ気づかず、ふと手の中の詩織の肢体に心奪われて、ふにゃりと相好を崩した。
その隙を庵原は逃さなかった。
「詩織ちゃん、これ持って」
照準を男に定めたまま、素早く1歩横に移動した庵原が、バケツを詩織に渡そうと右手を伸ばす。その右手が重力から解き放たれた瞬間、彼は左足を大きく一歩踏み出し、右手を振りかぶった。
腑抜けた男が顔を挙げた瞬間だった。鋭い音が響き、男は左頬に入ったパンチの軌道に沿って、大きく身体を仰け反らせた。
「ぐぁあああああっ!」
一瞬宙に浮いた身体が地面に落ちた瞬間、怒号のような呻き声を上げて頬を両手で抑えて身体を左右にゴロゴロと揺らしながら悶える。
その槙野の前に、散らばるポラロイド写真を踏みつけながら、庵原が冷たい怒りの表情で近寄る。