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第5章 炎

「あ、…ああ、……ん、ふ、ぅ…あっ」

何に恐れを抱いていたのか、既に分からなくなるほど意識が白くどろどろと混濁してきた。
細胞の全てに甘い蜜を充満させられたように、体中がむず痒く心地よくて仕方ない。
男の腰が前後に抉るような動きになると、熱い蜜壁からじゅくじゅくと滲む愛液が溢れだし、結合部から男の根元までをぐっしょりと濡らした。
その腰の動きにあわせて、ぐちゅぐちゅと、はしたなくエロティックな音が響き、空間が濃密な匂いに包まれる。

「はっ、…せ、いじ、さんっ！」

「詩織…」

男が、欲望に濡れた剥き出しの瞳で、詩織の汗ばんだ肢体をじっとりと見つめる。
その目線にまで煽られ、体中が制御不能に陥っていく。
もう、何もかもを暴かれて、全ての官能の穴に白い愛蜜を注ぎ込んで欲しい。

詩織の身体が槙野の腰に合わせて上下に動いている。
もう抵抗という言葉は欠片も残っていない。
共に揺れる身体が闇の中で獣のように交わっていく。
ただ本能に突き動かされるままに、雄と雌は自ら快感の種を互いに植えつけながら腰を振った。

「あっ、…せいじ、さっ……、んぁ、いっ、ちゃ…、いっちゃ、うよ…！」

泣き濡れた目で必死に声を上げる詩織の顔を、槙野が両手で包み込むと深く舌を差し込んで口腔さえも犯す。吐息を飲み込まれて、小さく痙攣し始めた詩織の唇に吸い付きながら顎を引いた槙野は、うっとりと詩織の顔に耽溺しながら微笑む。

「いけよ、詩織。俺のニンフ」

「は、…あっ、や、…ぁあああ！！」

囁くように告げてから、顔を歪め腰が外れるほど激しく中をかき回す男に、詩織の身体ががくがくと再び強く痙攣し、逸らした背中から飛び散った汗が放物線を描いた。

―――詩織。俺だけの、ニンフ…

暗い闇の中に、槙野征二の声が、深く這うように響いた。