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曖昧なままに
第2章 単なる男女
 それから機会を見つけては、俺と愛美は幾度となく顔を合わることとなっていた。

 とは言え大概は、一緒に食事に行ったりする程度である。一度だけ酒を飲みに出かけたこともあったが、彼女はそれほど酒が飲めないようだ。

 俺が密かに期待していた、泥酔してからの色っぽい展開。残念ながら彼女は、そんな素振りを一切見せようとはしていない。

 愛美は何と言うか、いわゆるオタク的な趣味があるらしく。期せずしてそんな話をした時に、彼女は深夜に放送されているアニメのことを、懇切丁寧に語ってくれていた。

 俺も割とマンガやアニメは好きな方だが、彼女の話は至極マニアック。とても俺が、ついていけるレベルにはない。それでもその手の話をしている彼女は愉しげで、夢中で話す顔を見るのは俺も悪い気はしていなかった。

 そんな一面を原因とするのは偏見が過ぎようが、やはり普通の若い女の子とは一風違った雰囲気を纏っているようには感じている。基本的には内向的であり、派手に着飾り街を闊歩したりするイメージは皆無。休日は家でゲームやアニメに、専ら興じているとのことだ。

 そんなことを繰り返す内に気がついたのだが、愛美の周囲には彼女特有のバリアーのようなものが存在している。もちろん目に映らない、あくまでそれは感覚的なもの。

 「恋愛に興味がない」という旨の発言に始まる、一連の言葉だったり。後は何気ない仕草や雰囲気が、俺にそれを意識させていたのだろう。

 一定以上の距離を詰めようとすると、彼女はスッとその身を躱す。時としてそんな空気が、俺にも伝わって来るのだ。

 だが俺を明確に拒絶しているかと言えば、そういう訳でもない。食事等のお誘いのメールは愛美からも度々来るのだし、つまりこうして会うだけなら問題はないということだった。

 最もその際の飲食代等は、俺が支払うので(愛美も財布を出す素振りは見せるが)、まあいい様に扱われているとも考えられなくもない。

 ともかく、出会い系サイトで出会った大人の男女としては、空恐ろしいほど何事も無く健全に俺たちの関係は続いていた。一向に進展はしないが、それでも終ろうともしていない。

 恐らくは俺が、自分の願望を顕わにしない内は、きっと――。
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