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曖昧なままに
第2章 単なる男女
こう話してしまえば、この関係は愛美によってコントロールされているかのように、思われるかもしれない。しかし実際は、それだけとは言えなかった。
最近まで意識になかったことだが、俺は自分自身がかなり臆病になっていることに気がついていた。それは殊に、恋愛に関してのことである。
その原因を己の中に探せば、やはりそれは離婚した時のダメージへと行き当たった。
ある時、やはり離婚歴のある友人と、酒を飲んだ席に於いて――。
「お前ってさ、離婚をマイナスに捉え過ぎてるんじゃないの? ハッキリ言って、バツイチの方がモテるんだぜ」
その男は自信満々に、俺にそんなことを語っている。
ある程度の経験を有していることをポジティブに捉えれば、或いはそうなのかもしれないとは思う。世間でも一部に、そんな風潮があるのも理解はしていた。
それでも俺の場合どう逆立ちしようとも、そんな風にはとても思えはしない。性格的なことも、もちろん関係はしているだろう。しかしそれ以上に離婚という経歴が、少なからず俺の心に傷を刻んでいたのだ。
俺の離婚の原因。その発端は実に明確なもの。それは妻の浮気である。
当時それを知った俺は、当然ながら大きなショックに苛まれていた。そして我を失ったようにして、妻を激しく責め立てもしている。自分でも驚くくらいに、俺は怒りを顕わにしていた。
そんな俺に対し、妻が口にしたのは謝罪の言葉ではない。彼女はキッと俺を睨みつけると、こんなセリフを言い放っていた。
「浮気される方が悪いのよ」
頭を鈍器で殴られたような衝撃が奔る。謝罪処の話ではなかった。妻はあろうことか、逆に俺を責めたのである。
何れにせよ――そこで俺は、悟らなければならなかった。それはこの時を以て、俺たちの夫婦関係が終焉してしまったことを……。そんな風に言われてしまえば、どう足掻いても仕方がない。彼女は言い訳さえ、してくれないのだから……。
俺は自分の中に湧き上がった怒りをぶつけるように、最後に酷く妻を罵っている。そしてそれを最期に、俺たちは離婚へとに至った――。
どうして俺は、あんな薄情な女と結婚したのか。当時は自分の身の不幸だけを、頻りに呪っていた。
しかし時が過ぎると共に、俺の考えにも微妙な変化が生じる。一度頭が冷静になった時に、俺は妻の気持ちもわかる気がしていた。
最近まで意識になかったことだが、俺は自分自身がかなり臆病になっていることに気がついていた。それは殊に、恋愛に関してのことである。
その原因を己の中に探せば、やはりそれは離婚した時のダメージへと行き当たった。
ある時、やはり離婚歴のある友人と、酒を飲んだ席に於いて――。
「お前ってさ、離婚をマイナスに捉え過ぎてるんじゃないの? ハッキリ言って、バツイチの方がモテるんだぜ」
その男は自信満々に、俺にそんなことを語っている。
ある程度の経験を有していることをポジティブに捉えれば、或いはそうなのかもしれないとは思う。世間でも一部に、そんな風潮があるのも理解はしていた。
それでも俺の場合どう逆立ちしようとも、そんな風にはとても思えはしない。性格的なことも、もちろん関係はしているだろう。しかしそれ以上に離婚という経歴が、少なからず俺の心に傷を刻んでいたのだ。
俺の離婚の原因。その発端は実に明確なもの。それは妻の浮気である。
当時それを知った俺は、当然ながら大きなショックに苛まれていた。そして我を失ったようにして、妻を激しく責め立てもしている。自分でも驚くくらいに、俺は怒りを顕わにしていた。
そんな俺に対し、妻が口にしたのは謝罪の言葉ではない。彼女はキッと俺を睨みつけると、こんなセリフを言い放っていた。
「浮気される方が悪いのよ」
頭を鈍器で殴られたような衝撃が奔る。謝罪処の話ではなかった。妻はあろうことか、逆に俺を責めたのである。
何れにせよ――そこで俺は、悟らなければならなかった。それはこの時を以て、俺たちの夫婦関係が終焉してしまったことを……。そんな風に言われてしまえば、どう足掻いても仕方がない。彼女は言い訳さえ、してくれないのだから……。
俺は自分の中に湧き上がった怒りをぶつけるように、最後に酷く妻を罵っている。そしてそれを最期に、俺たちは離婚へとに至った――。
どうして俺は、あんな薄情な女と結婚したのか。当時は自分の身の不幸だけを、頻りに呪っていた。
しかし時が過ぎると共に、俺の考えにも微妙な変化が生じる。一度頭が冷静になった時に、俺は妻の気持ちもわかる気がしていた。