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曖昧なままに
第12章 波乱の再会
 俺がアパートに帰り着いたのは、翌日の昼過ぎ。結局、道中で殆ど仮眠を取れなかった俺は、ベッドに横になると無意識の内に眠っていた。

 目を覚ました頃には、もう夕刻。俺は目を擦りつつ携帯を手にし、着信していたメールを確認する。


『いい女が暇を持て余してますけど…。連休だというのに何てことなの!この埋め合わせは高くつきましてよ(笑) 奈央』


 俺はそれを目にして、ふっと和む。同時にすぐにでも奈央に会いたい、そんな気分に苛まれていた。

「いや、駄目だ」

 思わずそう口にし、首を横に振る。奈央に逃げ込もうとする自分を、諌めたつもりだが。

 じゃあ、どうする? 直後に俺は、そう自問した。

 愛美に会ったとして、一体何ができると言うのか。写真の男――柴崎に似ているというだけの俺。もし柴崎の死が、愛美に辛い想いを残してるとして。ならばそこに重なる俺は、彼女の想いを呼び覚ますだけではないのか。

 それが嫌だから、愛美も俺から去ることを選んでいる、としたら。

 だったら、もうこのまま。俺は奈央からのメールを見つめながら、思い出したようにズボンのポケットからメモの切れ端を取り出す。それは愛美の母親から、受け取っていたもの。

「……」

 右手の携帯と左手のメモ。それを交互に眺め、俺の心は揺らいだ。

 だが――

「いや……俺には無理だろ」

 そう言って苦笑を浮かべた俺は、そっと携帯を閉じる。

 そう今更、無理なのだ。俺は愛美の秘められた過去の一端を知り、剰えその想いを想像してしまっている。既に見ぬ振りをすることなど、俺にはできなかった。

 例え行き着く先に、闇が口を開けていようとも……。

    ※    ※

 俺がその場所に着いたのは、もう日の暮れた午後八時過ぎだった。

 隣の市の郊外に位置する、24時間営業のスーパーマーケット。あのメモに記されていた、場所である。

 愛美がスーパーでバイトしていたのは、本人から聞かされていた。だからそれまでも、思い当る店舗を回ったりしている。だが市外までは、流石に想定外だった。

 母親は知人が愛美の働く姿を見かけている、と俺に告げてメモを渡している。しかし多分、それは偶然に知り得たことではあるまい。

 あの母親は常に、娘のことを気にかけていた筈だ。会わずにいようとも、愛美の足取りを密かに追っていたのだろう。
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