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曖昧なままに
第12章 波乱の再会
 とは言え、愛美が今もこの店で働いているなんて、そんな保証などありはしない。そして、現在の時刻は既に夜だ。

 だがここまで来て彼是と考えても、仕方のないこと。どの道、もう行動するしかない。

「まあ、ともかく――行ってみるさ」

 俺はそう言うと、車から降り立つ。

 愛美に会えることを、やはり密かに期待して。俺は店舗の中に、足を進ませて行った。

    ※    ※

 連休も既に四日目となっていた、午前二時過ぎ。

 このスーパーを訪れるのも、これで三度目だった。

 それまでの二回に於いては、探した姿を見つけられずに……。

「……」

 俺は買い物カゴを片手に、ガランと空いた店内を歩いて回る。

 缶ビールとカップ麺――それを適当にカゴの中へ放り込むと、そのままレジに向かう。

 ピッ、ピッ――とバーコードを手早く読み取り、俯き加減の彼女は言った。

「――369円になります」

「……」

 俺は黙したまま、懐より財布を取り出す。

 しかしそれは、支払に用いる為ではない。

 俺はその財布を、彼女の視線に入るようにして、そっとカゴの隣に置く。

「――!?」

 それを目にして俄かに表情を変えた彼女は、顔を上げて初めて俺の顔を見た。

「あ……」

 短く声を洩らす彼女に、俺は微笑みかけて言う。

「暫くだったね……愛美」

「洋人……さん」

「驚かせて、すまない」

「……」

「こんな処まで来て、迷惑なのもわかっている。だがどうしても、もう一度。愛美と話しがしたかったんだ」

「……」

 愛美は感情の読めない何とも複雑な表情をして、ひたすら俺を見つめていた。

 しかし焦点を失うようにして、その瞳が徐々に大きく揺らぐと――


「――いけない」


 愛美は呆然として、そんな言葉を発する。

 そして――

「あっ――愛美!?」

 突如として――俺の前から逃げるように、愛美は駆け出していた。
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