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曖昧なままに
第12章 波乱の再会
 やや意外にしている愛美の顔を見つめ、俺は更に話を続けてゆく――。

「俺、ずっと不思議に思っていたんだ。どうして愛美は、俺との――あんな関係を続けていたのかと……。孤独を癒されている一方で、俺は君には何も与えられてやれない。ずっと、そう感じて焦っていたから」

「……」

「だけど愛美がいなくなってから、気がついたんだ。愛美も俺に、何かを求めていた筈だって。俺はそれが何なのか――本気で考えようとせずに、その想いに応えられなかった。結局、俺は愛美に甘えていただけ。すまない……そのことを謝りたかった」

 そう話して頭を下げる、俺。愛美にもう一度、会おうと決めた時。俺が彼女に伝えたかったのは、この『感謝』と『陳謝』。俺はたった今、それを果たし終える。

 しかし――愛美の過去の一部を知ってしまた以上、そのまま話を終わらせる訳にはいかなかった。

「君のお母さんを訪ねたのは、どうしても、もう一度会いたかったからだった。だけど、話を聞いて写真の……柴崎さん、という人のことを俺は知ってしまった」

 その名を耳にして、愛美の表情が強張る。そしてついに、その重い口を開いた。

「母は……何と?」

「内縁の夫だった柴崎さんを――自分の手で殺している、と」

「そう……ですか。他に、私の事は……何か?」

「そのことで、君の人生を狂わせてしまった。俺が聞いているのは……それだけだよ」

「……」

 愛美は思い詰めたように、また視線を下げ俯いていた。

 そこから続いた長い沈黙――。俺は黙って、愛美の様子を窺う。彼女は垂れた髪で顔を隠すと、まるで時が停止したように微動だにしていない。

 やがて俺は意を決すると、自分の方から核心へと踏み込んだ。

「お母さんが、言ってたんだ。俺が柴崎さんに、似ているって……」

 ぴく――と微かに愛美の肩が揺れる。

「愛美が俺に――何を求めていたのか。今、俺はそれを知りたいと思っている」

 その言葉をじっと受け止めると、今度は愛美が語り始めた。

「洋人さんの部屋に、財布を置いてきたこと。実は私――すぐに気がついていました。だけど――取りには戻らなかった。もしかしたら、こうなることを何処かで期待して……」

「俺が……会いに来る、と?」

 愛美は――コクリと頷く。
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