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曖昧なままに
第14章 月並みな俺
ザアアッ――。
その日は目が覚めた時分より、初夏の雨が降り続いていた。
空は暗い雲に覆われ、陽射し差すことはなく、日中とは思えぬ程どんよりと暗い。
部屋の窓はカーテンで覆われたまま、電気を灯すこともなく。
「……」
ベッドに横たわったまま、俺はじっと天井を見上げていた。
俺は子供の頃から、家に中で雨音を聴いているのが割と好きだった。その音に耳を傾けながら何かを思慮していると、心が落ち着き良く考えが纏まるような気がしていて……。
だけど今に限っては、そう上手くはいきそうもない。何時間そうしていても、明確な答えを導くことはできなかった。
それは無理もないことなのだろう。俺自身が幾多、誤りを繰り返した結果がある。その上で何が正しいなんて、考える方がおこがましいと思われ……。
そう――既に俺は間違っている。だから俺が探しているのは、そんな己に対するけじめなのか……。
今日は休日の土曜日。俺にとって、とても重要な一日だ。
奈央には自分の部屋で、待つと告げられ。
愛美は明日の早朝に、この街を去ると言っている。
「もう……こんな時間……か」
ふと時計に目を向け、期せずしてそう呟く。時刻は午後六時過ぎ――。
ふう――。
俺は一つ息を吐き、ようやくベッドから起き上がった。
※ ※
車に乗り家から出ると、アパートの前のバイパスは車の長い列。その渋滞の最中に合流すると、俺は車のワイパーを一段階速い間隔へと切り替えた。
静かに降り続いていた雨は、ややその強さを増している。
テールランプの点灯を繰り返しながら、車の列はそれでもゆっくりと進む。やがて前方には、国道との大きな交差点が視界に入った。
その交差点を右に折れれば奈央の元へ、左に折れれば愛美の元へとそれぞれ通じてゆく。
「……」
キュキュ――と音を鳴らすワイパー。フロントガラスを左右に行き来する動きを、俺は何気なく目で追っていた。
そして、交差点に差掛かろうとして――。
カッチ、カッチ、カッチ――。
心の赴くまま――ウィンカーのレバーを、俺の目指した方向へと入れた。