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曖昧なままに
第15章 唯、興じて
 つ……冷たい。

 咥え取らんばかりの奥底と、俺に向けられた空虚な眼差し。それらが俺に齎したのは、極寒の如き冷えだった。

 体温と生気が徐々に吸い取られるような、そんな感覚がまた俺の心に戦慄を刻む。

「柴崎さん――どうかしたの?」

「違……ぅ……」

 何時しか少女の顔に変わりし愛美。その無邪気さが却って、俺の精神を容赦ないまでに責め立てるようだった。

 如何ともし難い状況に心身を侵され、やがて俺の中に芽生えたのは――絶望。

 俺は……何をしようとしているんだ。何一つ……果たすこともできない……くせに。

 だったら……どうして俺は、ここに来て……どうして俺は……?


「!」


 そんな自問の中で、脳裏を過ぎったのは――ある背中。それを思い浮べた時に、俺は弱い自分を激しく叱咤していた。


 このクソ馬鹿野郎――! 自分の我を通す為に、俺は何をしたんだ――?


 このまま何もできないのなら、俺はこの先も俺を卑下しながら生きていくことになる。とにかく、些細でもいい。俺には僅かでも、抵抗をする必要があった。

 きっと誰に報いることも、できはしないのだろう。

 それでも今のこの一瞬は只、愛美の為に――俺は抗わなければならない。

「――愛美!」

「なに、柴崎さん?」

「違う! 俺は……柴崎じゃ、ない!」

「え…………あっ!」

 俺は乱暴に愛美の胸を掴むと、その乳首を口に含む。その身体に刻むように、指を弾力に沈め込み。無我夢中で左右の乳首を、強烈に吸い上げてゆく。

「ツッ……」

 相変わらず二人の結合部は、ガッチリと喰い込んだまま。無理に引こうとすれば、千切れんばかりの痛みが奔る。

 だが、それならば――俺は更に奥へ届けと、腰を激しく突き押した。

「あ……あ……」

 無感情な愛美の口から、声が漏れ出す。

 それを拠り所として――俺のもがくような、乱雑で不器用な攻めは続いた。胸に顔を埋めながら、ガンガンと腰を押し込み続ける。

 愛美の身体が布団からはみ出すも構わず、ひたすら行為に没頭した。


 ――――じわっ。


「!」

 それは達した奥で、俺が得た微かな兆し。

 それと共に奥から感じたのは、徐々に回復する温度――。

「ま、な、み!」

「あっ……あはぁ……あっ、ああ!」

 腰の動きが少しづつ、ストロークを始めた。
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