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曖昧なままに
第3章 白くない聖夜
 一体、愛美はどうしてしまったのか? そう疑問に思いながらも、否応なく早まる鼓動。そうして俺が車を向かわせたのは、コテージタイプのラブホテルだった。

 街外れの小高い山の上にある、そのホテルを俺が最後に訪れたのは、もう十年以上前のことになろう。随分と寂れてはいたが、その分部屋は空いているようだった。

 空室の駐車スペースに車を停めると、俺は道中ずっと黙ったままの愛美に声をかける。

「こんな所で……良かったのかな?」

 その問いに、愛美はコクリと静に頷く。

「じゃあ、行こうか」

 俺は彼女を誘い、部屋の中へと入って行った。

    ※    ※

 入室して、十五分後――。

「……」

 腰にバスタオルを巻いた姿となっている俺は、ソファーに腰掛けて飲み物を口にしている。

 シャアアッ――。

 浴室からは聴こえているのは、愛美がシャワーを浴びる音。それを耳にしながら、俺はソワソワと落ち着かない気分だ。

「――!」

 やがてその音が止み、暫くしてカチャリと浴室のドアが開く。俺の興奮が、否応なく高まってゆく。

 愛美も身体にバスタオルを巻きつけた姿で、ゆっくりと俺の前に立った。

 肩や脚――その白い肌に、思わず俺の視線が泳ぐ。それを、誤魔化すように――

「何か……飲む?」

 と訪ねるが、愛美は黙って首を横に振った。

「じゃあ……」

 俺が声をかけ、二人はベッドへ。その上に肩を並べるように座る、俺と愛美。

 俺の中には、すぐにでも押し倒したい衝動が芽生える。だがそうしなかったのは、愛美の態度が気になっていたからだ。

「ずっと黙ってるけど。何か、無理してない?」

 俺がふと問いかけた時。愛美はようやく顔を上げて、俺を見る。

「いいえ……だけど少し、緊張して……」

「本当に、いいの……かな?」

「はい……構いません」

 彼女は顔を紅潮させながら、やや潤んだ瞳を向けそう答えた。しかしその直後、少し慌てたように、こんなことを言う。

「あ、もしかして、私が一方的に……? 洋人さんこそ、私なんかで――」

 そう話す拍子に愛美の胸元から、バスタオルがはだけた。

 やや小振り形の良い胸――それを目にした瞬間、俺の中のスイッチがカチッと音を立てる。


「ん? んんっ……」


 肩を抱き寄せると同時に、俺は愛美の口を塞いだ。
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