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曖昧なままに
第4章 飲み潰れた後
 俺の勤務する会社は、大手メーカーの下請けの地方支社だ。年末でも容赦ない納期が課せられ、呑気に構えていればオチオチ年も越せない。

 仕方なく連日の深夜残業に勤しみ、ようやく年内の仕事には一区切り。ほっと胸を撫で下ろした時には、もう仕事納めの日だった。

 気がつけば、あの夜から既に四日が経過している。あの夜――とはつまりイブの夜だが、始めから素直にそう言い表さないのは、俺の中にバツの悪い気持ちがあるからに他ならない。

 そりゃそうだろう。いい歳をした男が、クリスマスに何かを期待した挙句。彼女とラブホに向かったまでは、辛うじて良しとしよう。しかし、その後は……。

 結局は愛美にされるがまま。自分だけが空を飛んで、ハイおしまい。それで恰好がつく筈もないのだ。全く面目次第もない、とはこんな感じなのだろう。

 仕事が忙しかったからではなく、恐らくそんな気分が真の原因。何のことかと説明を加えるのなら、それはあの日から愛美と連絡を取っていないことに対してだった。

 そして愛美の方からも、一切のメールも電話もない。否、もう永遠にないのかもしれない。俺がそんな風に弱気になるのも、同じくあの夜のことに起因している。

 しかし――と、俺はあれから幾度となく考えていた。そして日が経つにつれ、幻想であるかのように感じる。そうして思い浮かべるのは、やはりあの夜の愛美のことだった。

 別にそれまでの彼女が、嘘をついていたとは考えていない。しかし彼女が男を知らないと思い込んだのは、俺の間違いなのだろう。それはあの時、俺を弄んだ態度から判断すれば当然のこと。

 俺が面食らっていたことを差し引いても、あの様は尋常ではなかった。

 一方で俺は愛美の涙も見ている。あれは明らかに、最後の一線を越えることを恐れてのことだろう。それだから、余計にわからない。どうやら過去の経験によるものらしいのだが……。

 一体、彼女の過去に何があったのか……?
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