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曖昧なままに
第5章 尚、儘ならず
 その後の年末年始については、取り立てて語る必要もないだろう。何をしたということもなく、気がつけば休みもあっさりと過ぎ去っていた。

 一応は実家にも顔を出してはみたが、それも顔見せ程度に終わっている。弟夫婦が子連れで賑やかに帰郷しているのに比べ、バツイチの俺はすこぶる居心地が良くない。

 母親に「アンタもそろそろ、どうにかしなさいよ。誰かいい人でも、いないの?」とため息交じりに問われれば、俺は苦笑をし誤魔化すしかなかった。

 そんな時に思い浮かべたのは、愛美の顔ではある。だが現状に於いては、当然ながら彼女を「いい人」とすることは困難だ。はっきり言って、彼女が何を考えているのか全く理解できない。その存在は、明らかに俺を戸惑わせていた。

 あれから顔を合わせていないが、何度かメールのやり取りはしている。その内容は何処で遊んだとか何を食べたとか、そんな他愛もないもの。そんな普段のテンションが、余計に捉え処がなく思えてしまうのだ。

 俺たちの関係を難解にしているのが、二度の肉体的な接触。もしそれが普通のセックスであるのなら、別に問題ではなかったかもしれない。

 二回とも愛美が一方的に俺に施す形であることが、何とも言えず悩ましいのだ。もしかしたら、アレが彼女の性的な嗜好なのだろうか……。行為に及ぶ彼女の態度から、ついそんな風に考えてしまう。

 しかしそれは当面の問題とは違っていた。もっと重要なのは、俺たちは何ら互いの意思を確認することなく、そこに至ってしまっている点。

 それが根本的に、誤っているように思える。俺は何も、快楽のみを欲してなどいない。

 だからこそ次に二人で会う時には、そこをクリアーにする必要を感じていた。つまり愛美が俺と付き合う気があるのか、それを改めて確かめるということである。

 出会った頃からの彼女の言葉からすれば、それを問うのは無駄なことかもしれない。だが例えそれでこの関係が終わるとしても、もうこれ以上曖昧にはしてられなかった。

 既に不思議な魅力に足を取られながら、それでもまだ俺は抗おうとしていたのだろう。
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