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曖昧なままに
第5章 尚、儘ならず
「よ、よせ!」

 愛美の足先から逃れるように、俺は思わず声を荒げ立ち上がった。

 静かな雰囲気の店内。他の客たちの訝しげな視線を集めていることに気づき、俺は赤面しながら再び椅子に腰を下ろす。

「急に、どうかしました?」

 惚けたように微笑を浮かべる愛美。それを見て、俺は些か頭に血が昇っていた。愛美は俺を真面に、相手にしようとはしていない。それは十分にわかった。

 ならばもう……。俺はその時の決意を、彼女に告げる。

「俺と付き合うつもりがないなら、もう会うのはよそう」

 言ってしまった。話してから、若干の後悔の念が襲っていたのは確かだ。それは彼女の不可思議な本性に対する、俺の興味が尽きていない証拠。

 だが何れは同じ結論に、突き当たる筈だ。

「付き合うって――結局は、セックスなんですか?」

「え……?」

「私がちゃんと洋人さんを受け入れていたら、それで良かったんですか?」

「そんなこと言ってないよ。そもそも、付き合うのが無理だと言ったのは、キミの方だ」

「イブの時……本当は私も、そうしたかった。洋人さんならいいと……。だけど、やはり無理だったんです」

「それは……何故?」

「……」

 昔のことを思い出した――あの時、確か愛美はそんなことを口にした。だが愛美は遠い目をしただけで、俺の質問に答えようとしない。

 暫くの間を置くと、愛美は改めて話を続けた。

「私の口で洋人さんを満足させられた時は、何故だかとても嬉しくて。洋人さん……あんなに沢山……気持ち良かったんですね?」

「い、いや……それは」

 赤裸々な言葉に、狼狽える俺。

「たぶん、全てに応えられる時も来ると思います。それまで待っていただけませんか? 私……もっと色々なこと、頑張りますから」

 潤んだ瞳で見つめられ、俺は怯む。交わることを無理としながらも、性欲の捌け口にはなると彼女は言っているようだった。あまりにも理解に苦しむ話。

「俺が良しとしたとして……キミが俺に求めるものは、何?」

「貴方は、私の欠落したものを埋めてくれる人。きっと、似ているから」

 似ているって、誰に……? それを訊ねても、今の愛美は答えてくれないだろう。

 結局は、謎を深めただけ。そして、またしても曖昧なままに、気がつけば既に……。


 俺は彼女を連れ――自分の部屋へ向かっていた。
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