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曖昧なままに
第9章 乗り移りし妹
 自分の股の狭間。そこにある俺の頭を抱き、快感に身体を振るわせるアイナ。

 ぐしゅっ――迸る滴が、敏感な周囲を熱く濡らした。

 その返りを顔に浴びつつ、俺はふと思う。俺の行為は、アイナの奥の愛美をも濡らしているのか、と。

 否、当然その筈だった。初めての秘所への愛撫を以て、俺は彼女を喜ばせている。それは結果としての反応を見れば明らかだ。つい不安とも思える感情を抱いてしまったのは、男としての自信を失している証拠なのだろうか。

 一方的に愛美に施され続けてた――その弊害として。

 俺が奈央との情事に向かったのも、一部にはそれが起因してないとは言い切れない。だが愛美により失した自信は、愛美より取り戻さねばなければ無意味。俺は漠然と、その様に思っていた。

 もし、そうならば……。


 その後――衣服を全てを脱ぎ去り、二人はベッドの上にその場所を移す。

「お兄ちゃん……」

「……」

 仰向けに寝るその顔に、俺は黙って口づけをした。

 この流れのまま恐らく俺たちは、初めて一つになろうとしている。そこに至り俺は、彼女をアイナとする思い込みを捨てた。

 俺が真に入りたいのは、愛美の奥底である。虚構のままに果たされた時、それが幻になるような気がして……。如何に彼女がアイナで在り続けようとも、せめて俺だけでも愛美として愛でなければならないと強く思っていた。

 身体を重ね、じっとその瞳を見つめる。すると、愛美が俺にこう訊ねた。

「お兄ちゃん……愛菜としたい?」

「ああ――」

 ――愛美と。

「でも、その前にお願い――」

「うん。もちろん、着けるから」

 避妊の心配したのだと考え、俺はそう答えるが――

「違うの。着けては駄目。そのまま来て」

「え? だけど――」

「いいの。それから、愛菜のお願いはそのことと別」

「そのお願いって――?」

 その瞬間、柔らかな微笑を浮かべていた表情が一変。愛美は感情の読めない真顔で、何処か寒々しい眼差しを向けた。

「覚悟――してほしいの」

「か……覚悟?」

「そうだよ、お兄ちゃん。私たち兄妹は、いけないことをしようとしてるの。それは『ルール』を破ることと同じだよ。それをしたら、お兄ちゃんは……『最期』……だから」

「――!?」

 それを聞いて――俺の全身をピリッとした緊張感が走り抜ける。
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