この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
35
第14章 二年
彼と出逢ってから
もうすぐ二年が過ぎようとしていた
私の想いは日々膨らむばかりだった
互いに色んな出来事が起こる中
二人で居られる時間だけが
本当の自分で居られる時間だと
実感していた
父は心臓疾患から障害者認定がおり
通院や入院も金銭的に少しは負担が減るだろうと
思っていた
でも母が父の入院中に
自宅に届く督促状を見つけ
慌てて連絡をしてきた
「固定資産税も…銀行のローンも…
滞ってるって…」
私はため息をつくことしかできなかった
病院へ母と向かうと
父が月末に請求された
入院費の請求書を私に手渡す
「美沙…悪いけど頼むな…」
その瞬間私の中で抑えてきた感情が
溢れた
「いい加減にしてよ!
私はあなたのお財布じゃないの!
生活費も渡さずに支払いも後回しにして
どこにお金使ってるの!」
思わず病室だということも忘れ
吐き出してしまった
父は涙を浮かべて
「ごめんな…父親らしいこと…
なにひとつしてやれなくて…」
と私に縋った
私はその父の姿を見て
兄が言っていた言葉を思い出す
「あの人はお金を借りるときだけ泣いて縋るんだ
借りたあとはしれっとして返す気配もない
俺最後に会いに行った日の帰りにさ
あの人におい!三万くらい置いてってくれよ!
って言われてさ
お金は渡さなかった…
あぁこの人はそういう病気なんだろうってさ
俺は何も感じることができなかった…」
私も同じだった
もうこれ以上は無理だと限界だと
心の底から感じていた
私は母と食堂に向かうと
ある決心を伝える
「私はまだお母さんの面倒を見ることは
できるけどお父さんは無理だよもう…
別れるか…あの家を出て欲しいの…」
母への不信感や
小さな頃のトラウマはまだ消えていない…
でも母は母なりに自分だけで自分の生活をしている
私へのお金の無心はなくなっていた
母は
「そうだよね…
本当に美砂には申し訳ない…
ちょっと考えてみるよ…
まぁ老いては子に従えって言うしね…」
と答えた
私は古くなった実家を解体し
土地を売り
父のお金の清算をつけ
父を見捨ててしまおうと
一人で生きて行ってもらおうと
そう考えていた
自分がこれ以上の負担を背負わず
清算する方法はそれしかないと思った