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第6章 不思議な契約
「俺もここに帰って来ていいかな
朝だけ家に帰るけど
またお昼前には戻るから」
謙さんが腕枕をしながら言った
「はい…」
私が言うと
「敬語はもういいから」
と笑った
朝目が覚めると謙さんはいなかった
10時になると謙さんが戻ってきた
「黙って行ってごめんなぐっすり眠ってたから」
そう言うと大きな袋から
自分の服や荷物を出していた
私は何も聞かない
何も言わない
ずっとそうして来たから
求めて叶わなければ悲しい思いをして
聞いて傷つく思いをするくらいなら
聞かないほうがいい
私は傷つくことが怖かった
だからそれでいいと思った
「お昼には出掛けるからこれに着替えて」
謙さんが白いスーツを私に差し出す
着替えるとぴったりだった
「似合うよ綺麗だ
やっぱりな
7号でも大きいだろうと思ってたんだ」
ソファに座った謙さんが
私を見てニコニコしながら言った
「よくわかったね!
さすが謙さんだ
ありがとう…」
私は謙さんの膝に飛び乗りキスをした
昼食を近くのカフェで済ませ
謙さんと事務所に行った
たくさん並ぶデスクに
一人だけ男の人が座っていた
「あっ、おはようございます」
立ち上がって謙さんに挨拶をすると
私を見て驚いた顔をした
「キャストさんじゃないですよね?
どうしたんですか?女の子ここに連れて来て…」
不思議そうに彼が聞く
「あぁ、今日から俺の右腕
こっち側で働いてもらうから頼むな」
謙さんがそう言うと
彼は笑顔でうなずいた
「裕二だよ、横山裕二
一番古株だし昔から知ってるから
何かあったらまず裕二にな」
そう言うと横山さんが謙さんを呼んだ
「美紗悪いけどそこ座ってて」
言われた通りデスクに座る
二人はパソコンを見ながら難しい顔をして
話をしたり
電話をしたり
時には声を出して笑ったり
それをぼんやり眺めていた
キッチンからコーヒーを運んできた謙さんが
私を呼ぶ
「裕二
先に言っとくけど美紗は俺の女だから
事情があって今一人にしておけない
俺が一緒にいてやれない時は
気を付けてやって欲しいんだ」
謙さんが言うと横山さんが
「はい、分かりました」
と私を見て微笑んだ