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第8章 揺れる心

「気持ちだから
もらってやって」

横山さんが私を見つめる
小さな箱をあけると指輪が入っていた

「えっ…こんな高価なものもらえないよ」
私が言うと

「つけてくれなくてもいいからさ」
そう言って足早にバーへと戻って行った

私は追いかけるようにして
バーへ戻った

謙さんが戻って来ていた

「どした?」
私の様子がおかしかったのか何度も謙さんが
心配そうに聞く

私は何も言えなかった

そしていつものように謙さんとあの部屋に戻った

謙さんは私が気に入っていた
ブランドの新作のバッグやアクセサリーを
プレゼントしてくれた

「美紗の22歳のはじめて
俺がもらっていい?」

謙さんがキスをする

私はいつものように謙さんを受け入れながらも
ついさっき
抱きしめられたときの横山さんの
大きくてがっしりとした
たくましい胸や腕の感触を思い出してしまっていた

どうしたんだろう私…

戸惑いがふとした時に現れてしまっているかのように
謙さんが何度も何度も
私を抱きしめた



謙さん…

私は間違っていたのかな
後悔しないと
後悔したくないからと
幸せになれる道を歩いてるって
ずっとそう思ってたよ

あれからあの頃の謙さんの年齢に近付くにつれて
謙さんが教えてくれたこと
あの時の謙さんの言葉
理解できるようになってきた気がするよ

時々ね
夢を見るんだ

あの頃の謙さんが
いつも優しく笑ってる

目が覚めると涙が流れているときもあるんだ

おかしいよね…


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