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女は抱かれて刀になる
第5章 刀匠の武器
その言葉は穏やかなようでいて、有無を言わせない強引さがある。あまり断れば怒らせると判断した虎徹は、仕方なく札束を懐にしまった。
「……じゃあ、これは治療費と、和泉の今後のために使わせていただきます」
「虎徹先生は聡くて助かるな。ああ、それといい病院も紹介しよう。その傷、普通の病院に駆け込んだら、間違いなく揉めるだろうからな」
老人の言う通り、銃で撃たれた傷を見せたら、病院は間違いなく警察沙汰にするだろう。こちらは虎徹にとっても有り難い申し出、断る理由はなかった。
「そして一番大事なのは、虎徹先生のサインだ。今は腕が使いもんにならないだろうから自粛するが、後で必ずくれよ」
「それはもちろん。俺のサインに、そんな価値があるかどうかはともかく……約束は、守ります」
虎徹が頷けば、老人は満足げに笑み、襖に目配せする。すると残された菊の部下達が素早く襖を開け、虎徹に頭を下げた。
「先生、いってらっしゃいませ!」
すっかり特別扱いになってしまった事に、虎徹は冷や汗を掻く。だが、それで背中を縮めれば、また菊に付け込まれてしまうだろう。虎徹は胸を張り、和泉の手を取って一歩踏み出した。