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女は抱かれて刀になる
第5章 刀匠の武器
「調子に乗らないでください! 僕は正当なる評価の上で、応じる価値があると判断しただけです。今日のところは和泉を渡してやりますが、必ずこの刀を上回る策で取り返しますから」
菊は刀を奪い取ると、足音荒く離れを出て行く。大人気ない後ろ姿に、老人は髭を撫で溜め息を漏らした。
「すまないな、虎徹先生。みっともない真似はしないよう、締め上げておくからよ」
「あ……ありがとうございます。すいません、俺の問題なのに、助けてもらって」
「なに、虎徹先生の刀が業物だったから、あいつも認めざるを得なかったんだよ。その女を助けたのは、間違いなく先生の力だ」
すると老人は、着物の裾からあるものを取り出し虎徹に握らせる。何気なく受け取ったが、虎徹はそれが何かを確認すると、青ざめ首を横に振った。
「これ、札束じゃ……いや、受け取れませんよ、何もしてないのにこんなもの」
「いや、これは正当な報酬だ。あの刀の価値を考えてみろ? 先生達が納得したとしても、俺は納得いかねえ。乳臭せえガキじゃ、玉鋼代にもならんだろ。先生の大事な腕に怪我をさせた詫び代も入ってる、受け取ってくれ」