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女は抱かれて刀になる
第2章 淫らで穏やかな土曜日
木を叩く鈍い音が、遠くから響いてくる。和泉は障子から射す柔らかな日の光で、夜明けを知った。
「……うるさい」
煎餅布団から起き上がれば、和泉が着ていたのは作務衣の上衣のみ。見渡しても、下着すら見当たらない。だがそれは、虎徹と和泉の体格差を除いて考えても丈が長い。膝より下まで隠れているため、出歩いても問題はなさそうだった。
壁時計を見てみれば、針は5時40分を指している。
「ちょっと、早いんだけど」
存外に早い朝に顔をしかめながら、和泉は音のする方に向かう。縁側の先、庭に虎徹は立っていた。
「虎徹――」
和泉は声を掛けようとしたが、その姿を目に止めると、言葉を失ってしまう。槌を丸太に向かってひたすら振り下ろす虎徹は、汗だくである。槌に衝撃が走るたび強張る腕の筋肉は、まさしく雄だった。
その腕の感触は、出会ってからたった一日だが和泉の体に刻み込まれている。昨日の情事が頭をよぎり、和泉は腹の奥が熱くなるのを感じた。
「――どうしたんだ、和泉」
「ぅえっ!?」
するといつ気付いたのか、虎徹が槌を背負い和泉の前に立っている。和泉は飛び跳ねて後ずさり、頬に手を当てた。