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女は抱かれて刀になる
第2章 淫らで穏やかな土曜日
「俺を敷けば、柔らかいのか?」
「いや、全然?」
「だろうな」
和泉の答えに、虎徹は溜め息を漏らす。虎徹は厳つい男、脂肪のない体は床と大差ないだろう。だが和泉に、虎徹から下りる気配はなかった。
「でもいいの、いないよりはマシだから」
「そのうち、いないと駄目! に変わるぞ」
「ならないよ、虎徹は固いもん」
にべもない返事をすると、和泉は虎徹の胸に顔を埋める。
「明日で……終わりなんだね」
虎徹の耳に消えそうな呟きが聞こえた瞬間、和泉は顔を上げる。そして虎徹に不意打ちでキスをすると、また顔を埋めた。
「――おやすみ」
たった一瞬の触れ合いだったが、虎徹は見逃さなかった。和泉の頬が桜色に染まり、瞳が潤んでいた事を。虎徹は締め付けられる心臓を押さえるように、強く和泉を抱き締めた。
寝て起きてしまえば、別れの日は目の前にやってくる。その日に何をしてやるべきなのか、どうすれば和泉が救われるのか、虎徹は答えを持たない。だが時は何者も待つ事なく、日曜日までのカウントダウンを刻み続けていた。