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女は抱かれて刀になる
第3章 夕日の沈む日曜日
日曜日は、晴天だった。春の柔らかな日差しは世界を明るく照らし、爽やかな風と共に雲が流れる。喧しい車のエンジン音は森の奥へ消えていき、ラジオから流れる外国人の知らない歌が響く。今にも窓から身を乗り出してしまいそうな和泉に注意しながら、虎徹は山の中、車を走らせていた。
「あんまりはしゃぐなよ。何かあって怪我したら、シャレにならないぞ」
「大丈夫! だって虎徹が、ボクを助けてくれるでしょ?」
「物理的な怪我にゃ、絆創膏張るくらいの事しか出来ないぞ」
空を切り開くように伸びる木々が、どこまでも続くアスファルトの道路。まるで二人だけの世界のように見えて、虎徹は口の端を緩めた。
「あ、今猿がいた! すごい、生猿って初めて見たよ!」
「動物園とか、連れてってもらった事ないのか?」
「うん。だって動物園は汚いから、水族館の方がいいっていつも――」
和泉ははしゃいで話していたが、途中から段々声が小さくなる。肩を落とししおらしくなる頃には、もう声は聞き取れなかった。
「……うちはあんまり、虎徹みたいに自然な感じが好きじゃない家庭だったから。だからね、今こうしてるの、すごく楽しい」