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女は抱かれて刀になる
第3章 夕日の沈む日曜日
 
 再び顔を上げた和泉が見せたのは、寂しげな作り笑い。虎徹は今すぐハンドルを投げ出して抱き締めたい衝動に駆られたが、なんとかこらえて言葉を返した。

「まあ、今の時代そんな家庭も多いだろ。綺麗なとこで、お行儀良く暮らしてる方が楽だしな。俺だって昔、刀匠になるって言った時には、親に大反対されたぞ」

「そうなの?」

 和泉は昔話に、寂しさよりも好奇心を覚える。これはと感じた虎徹は、過去に思いを馳せながら語った。

「お前信じないかもしれないけど、俺は割といいとこのボンボンだったんだぞ。で、通ってた剣道教室の師範が、居合いもやってる日本刀好きでさ、居合い切り見せてもらった時に惚れたんだよ」

「惚れたって、日本刀に?」

「そう。それから師範に刀匠を紹介してもらって毎日通い詰めて、家に帰れば両親を夜中まで説得して。最後には放り出されたようなもんだな」

「じゃあ、お父さんとかお母さんとは……仲が悪いの?」

「いや、呆れられつつもスネかじらせてくれたし、何だかんだでうまくやってるさ。お前と会った日の朝、たまたま電車乗ってたのも、前の日実家で親父と酒盛りしたからだしな」
 
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