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女は抱かれて刀になる
第4章 若紫
風呂から上がっても、まだ夜は静かに広がっていた。ひとまず居間に戻った虎徹は電気を付けると、コーヒーを和泉に差し出す。
「真夜中にゃどうかとは思うが、まあ飲んどけ。落ち着くだろ」
インスタントのコーヒーは香りが薄いが、隣に座った虎徹に身を寄せれば、和泉は相乗効果で安心出来た。禊ぎが済んだのなら、話さなければならない事は一つ。和泉はマグカップを握りながら、口を開いた。
「……あのね。ボクのお父さん、高校で教師やってたんだ」
虎徹は和泉の細い腰に手を回し、頷く。
「菊さんが言ってた事だから、どこまで本当かは分からないけど……生徒からは慕われてて、同じ先生からも評判が良くて、尊敬されてた人だったんだって」
「いい人だったんだな」
「うん。でも、いい人過ぎて、人の借金まで背負っちゃったんだって。菊さんが家に来たのは、その取り立てだったんだ」
少しずつ繋がる糸に、虎徹の手がわずかに強張る。和泉はそれを察し苦笑いしながら、話を続けた。
「でも、乱暴な取り立てじゃなかったんだよ。菊さんは、お金を返すためにプランを提案したんだって」