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女は抱かれて刀になる
第4章 若紫
「ヤクザの取り立てだろ? 恫喝とかされなかったのか?」
「そういうのは古いヤクザのやる事だって。追い詰めて逃げられたり、ましてや殺しでもしたら損するのは自分だから、無理のない返済計画を考えるのが一番効率がいいとか言ってたよ」
ここで和泉が怯えを見せないのが、言葉が嘘でないなによりの証拠である。しかし虎徹には、どうしても菊が胡散臭く見えて仕方がなかった。
「それで、父親はどうしたんだ?」
「死んじゃった。でも、保険金目当ての殺人じゃないよ。事故だったんだ。けれど噂って怖いから、勝手に広まってさ。最後には、お母さんがヤクザに困って保険金を差し出したんだって話になってた」
ヤクザの取り立ての直後に事故死。それはあまりにタイミングが悪い。傷付く和泉へ口にするほど無神経ではないが、虎徹の胸に沸いたのも疑念だった。
「お母さんはそれで親戚と疎遠になっちゃったんだ。ボクはその時まだ7歳だったし、頼れる人がいなくて困ってたら……菊さんが、手を差し伸べてくれたんだ」
「あいつが?」
「住む場所も、生活も保証してくれた。菊さんは、ボクのお父さんを尊敬しているから助けたい、って言ってくれたんだ」