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女は抱かれて刀になる
第4章 若紫
もう謝るのはなしだと首を振り、和泉は立ち上がる。
「虎徹、ボク……明日も、ここにいていいの? ホントなら虎徹には関係ない話じゃん。知らないって、突き放してもいいんだよ?」
「馬鹿、関係ない話じゃないだろ。俺とお前は他人じゃない、恋人なんだからな」
「でも、もう月曜日だよ」
「何曜日でも何日でも、これから先は、ずっと恋人だ」
虎徹も立ち上がると、和泉を真っ直ぐに見つめながら断言した。その瞬間、和泉の目に浮かぶのは涙。泣きぼくろを伝う前に、それは大きな手で拭われる。
「――すごく嬉しい。ありがとう、虎徹」
母に振り向いてもらえない寂しさ、家族と慕った菊の裏切り、細い体で背負うには重すぎる荷。傷付き乾いた心も、虎徹の温もりで満たされ息吹を取り戻す。
「今は、ひとまず休め。これからどうするかは、日が明けてから話しても遅くないだろ」
虎徹は和泉を抱きかかえ、部屋へと向かう。少しでも安らかな時が過ごせるなら、また肉敷き布団になってやろうと考えながら。
夜は、明ける。朝日がどんな世界を照らすのかは未知数だが、時は一歩一歩進んでいた。