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深海のパンツァー
第10章 8*深海のパンツァー
潜覗鏡を握ったままレオンハルトは命令を下す。

「一番、撃てぇーっ!!」

トライデントが正に馬上から投擲された槍のように海中を進む。

グーンが発射と同時にストップウォッチを押した。
みな息をひそめる。その短い秒数が永遠に思えるのだ。

「潜覗鏡下げ」

艦内から敵艦を視認できる潜覗鏡が格納される。
覗いたままでは衝撃でケガをする可能性があるからだ。
それでも、レオンハルトは何度か潜覗鏡を覗いたまま射撃を指示した事が何度もある。

数秒後には乗員の緊張は落胆に変わってくるのだが―-







―-ガーンッ!!
炸裂音が響く。
皆言葉にはしないが表情が一瞬ほころぶ。

「潜覗鏡上げ」

足元から上がってくる潜覗鏡にレオンハルトは食らいついた。

敵艦から黒煙が吹き上がるのが見えた。

「敵艦ジャスティス級、被弾……沈むな」

「もう一隻は?」

グーンがレオンハルトに問う。

敵艦は複数。二隻を確認していた。
トライデント2番発射管にも装填はされているのだ。

「ここからでは狙うに邪魔です。救助させて戦線離脱させましょう」

ここで艦内から歓喜の声が上がる。
だが、喜べないのは艦長と副長。敵艦を視認している二人には生命を見ている。
そしてこの二人は船を愛している。敵艦であっても沈没は見るに耐えない。

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