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深海のパンツァー
第13章 11-セイレーンの涙
紫苑自身も致命傷の一撃を受けながら、彼女に治癒された経験がある。
それだけ、能力の高いマリアの神聖魔法でも紅葉が回復しないのは何故かと思った。
「なんで蘇生しない?」
紫苑はマリアに問う。
僅かに怒りの表情で、
「……ここにたどり着く前から…前から天に召されているわ」
マリアの言葉に甲板は騒然となる。
傷は治るが既に紅葉には魂がないのだ。
既に亡骸と化していた彼女が言葉を話し、涙を流したのだ。
今もその写真を見つめる目から涙が流れる。
だが、胸の鼓動はない。
紫苑は写真を見つめる瞳を閉じてやる。
その身体は……確かに冷たかった。
「海の女神セイレーン伝説……
その涙は…………荒れる海の心を海底に沈めてくれるという……」
ポツリとマリアが呟いた。
目の前の死に涙したのか。
イヴァリス人が妖魔の死に涙をしている姿をはじめて見たベクトルも紅葉にイヴァリスの印をきった。
セイレーンとは美しい女性の女神で長い髪が翼であるという。
その手には竪琴が奏でられ、海の怒りを沈め、航海中の船を助けるというイヴァリスの伝説だ。
どうしても紅葉の姿が海の女神セイレーンと重なる。
マリアはイヴァリスの印をきった。
それだけ、能力の高いマリアの神聖魔法でも紅葉が回復しないのは何故かと思った。
「なんで蘇生しない?」
紫苑はマリアに問う。
僅かに怒りの表情で、
「……ここにたどり着く前から…前から天に召されているわ」
マリアの言葉に甲板は騒然となる。
傷は治るが既に紅葉には魂がないのだ。
既に亡骸と化していた彼女が言葉を話し、涙を流したのだ。
今もその写真を見つめる目から涙が流れる。
だが、胸の鼓動はない。
紫苑は写真を見つめる瞳を閉じてやる。
その身体は……確かに冷たかった。
「海の女神セイレーン伝説……
その涙は…………荒れる海の心を海底に沈めてくれるという……」
ポツリとマリアが呟いた。
目の前の死に涙したのか。
イヴァリス人が妖魔の死に涙をしている姿をはじめて見たベクトルも紅葉にイヴァリスの印をきった。
セイレーンとは美しい女性の女神で長い髪が翼であるという。
その手には竪琴が奏でられ、海の怒りを沈め、航海中の船を助けるというイヴァリスの伝説だ。
どうしても紅葉の姿が海の女神セイレーンと重なる。
マリアはイヴァリスの印をきった。