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Dolls…
第7章 瞳の中の過去
あの人は、全てお見通しだ。
どれだけ私が強がっても、悪態をついても
その裏にある本音を全て暴いてしまう。
「━━━━━━っ」
悔しいような、恥ずかしいような、そんな気がした。
体にかけてくれた椎葉さんのカッターシャツは、私が袖を通すとワンピースになってしまうんじゃないかと思うぐらいに大きい。
私の体をすっぽり隠してくれてる。
……けれど、私は余計にわからなくなっていた。
椎葉 秋人と言う人間が、どんな人間なのか。
椎葉さんは、私が椎葉さんの事を憎んでるというのもお見通しだ。
それなのに、どうしてこんなに優しくしてくれるの?
いや、あの人がしてきたことを思えばシャツを貸してくれたぐらいで優しいとは思えない。
だけど、私の本音を見透かし私の良いように動いてくれる。
「━━━━……っ」
椎葉さんを愛してる奈々さんより、椎葉さんを憎んでる私を選んだ。
優しくする価値なんてないのに、どうして…?
開け放たれたドア。
そのドアから差し込む光を見ながら、締め付けるような胸の痛みを感じていた。
椎葉さんのシャツからふわりと香るムスク。
……別に、こんな気まぐれな優しさなんか嬉しくない。
私にシャツを貸したせいで風邪をひいたとか何とか因縁つけられるのが嫌だっただけで
あの人が風邪をひこうがどうなろうが私には関係ない。
更に言えば椎葉さんと奈々さんがどうなろうがそれも私には関係ない。
関係ないっ!
だって、私は椎葉さんの言う通り、椎葉さんを憎んでる。
あんな変態、大嫌いだ。
開け放たれたドアの向こうにいるであろう椎葉さんを思い浮かべながら必死に自分に言い聞かせた。
私は、あんな人、大嫌い…
なの…?