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Dolls…
第9章 腕の中の宝物
自分の中で次第に大きくなっていく迷いと不安。
それを押さえようとすればするほど、認めたくない何かが心を食い荒らす。
私の心の中に、淫らな化け物が住み着いたかのように。
認めたくない…。
そんな事があるはずないと、思えば思うほど心が苦しい。
心が今にも泣き出しそうになる。
キャンドルの炎だけが照らし出すこの広いダイニング、まるで私1人を閉じ込めてるようで
どんなに広いとは言え圧迫されて窒息しそうに思う。
そんなダイニングで1人、私の椎葉さんへの思いが日に日に増して行くのを、私は手に取るように実感していた。
そして、この時
1人で思い悩む私は、自分の事で頭がいっぱいで気づけずにいた。
私の運命だけじゃなく、誰かの運命すらも大きく変わって行く事を。
狂い出した運命の第二章の幕が上がっていた事を━━━━━
ザワザワ…
ガヤガヤ…
もう夜だと言うのに、さすが眠らない街と言われる東京。
夜になっても駅周辺には人が溢れ返っている。
そんな東京の駅に降り立った1人の男性…。
「何だよこの人だかり…、何かの祭か?」
大きなスーツケースを転がす男性は、人だかりを避けながら駅の外へと出て行く。
「すっげぇネオン。…うちの田舎と違って眩しいね~」
夜の東京は初めてなのか、その男の心は何故かウキウキしていた。
「ったく、椿の奴…、東京に出て来て早速心配かけてんじゃねぇよ。何だよ、音信不通って…」
ぶつぶつ言いながら男はある場所へと向かって行く。
夜の東京をもう少し満喫したいがそうも行かない。
男はある使命を抱えてここにやって来たのだから…
「椿の奴、驚くだろうな。俺がいきなり現れたら…、くすくす」