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Dolls…
第10章 美しき獣
「い、田舎育ちですから…、山の嵐には慣れてます…っ」


ただの勝手な憶測…。

椎葉さんが私の心配なんてするはずがない。


でも、もし本当にそうだとしたら…。


思ってもない椎葉さんの優しさが垣間見えてしまい、余計に椎葉さんの顔が見れなくなってしまった。

自分の都合のいい解釈で気恥ずかしくなるなんて、どこまで私は馬鹿なんだ。

椎葉さんに背中を向けたまま恥ずかしさを振り切るようにそう言い返した。


「……そうか。まぁ、不用意に窓は開けるなよ。食事の時間になったら迎えに来る」


━━━━━バタンッ



そう言い残して椎葉さんは部屋のドアを閉めて出て行ってしまった。

恐らくまた作業部屋に戻ったのだろう。



嵐になるとは言っても山の天気は変わりやすいって言うしすぐに収まるだろう。

幸いこの辺の山はそんなに高くないし土砂崩れもなさそうだし。




ドクンッ、ドクンッ…




また心臓がドキドキと跳ねてる。

椎葉さんの声を聞いて、椎葉さんに優しくされただけで、心が痛くなる。

ここ最近、ずっとこの調子。

自分でも嫌になる。


食事の時間になったら迎えに来るって言ってたけど、食事の時間まであと何時間だろう?

今日は椎葉さんも一緒に食事をするのかな?

迎えに来るって言ってたし、きっとそうだよね…。


椎葉さんと向かい合ったまま上手く食事をする自信なんかない。

今だって椎葉さんの顔は見ないようにしてたのに、胸の動悸が止まらない。

こんなんで、椎葉さんと顔を合わせる自信がない。


時計がないだけに緊張感か倍増してる。

心の準備をするには時間が足りないようにさえ感じる。



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