パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第10章 美しき獣

あの作業部屋まで行けば椎葉さんに会える。

部屋が停電したと言えば何とかしてくれる。


だけど、無我夢中で走りたまたま見つけたあの作業部屋までの道のりを覚えているかどうか

曖昧な記憶を辿りながら闇の中を走った。

そうしてる間にも雷は鳴り響き、所々に設置された廊下の窓から稲光が差し込んでいる。


大きくて立派な屋敷も、今はただただ不気味な化け物屋敷だ。



「はぁ…、はぁ…」



あの時、確か地下から逃げてきて

地下から階段を昇って…、と必死にあの時の記憶を呼び覚ます。

恐怖でいっぱいの頭は混乱したかのように上手く働いてくれないけど、それでも…。




椎葉さん…

椎葉さん、何処にいるの…？





息を切らせながら必死に長い廊下を走っていると…








━━━━━ピカッ！！

「…………っ！！」


ひたすら前へ前へと進ませていた足が止まった。





廊下の窓から差し込む稲光。

何秒という短い感覚だが暗闇に包まれた廊下の前方を照らしてくれる。

その稲光に照らされて、前方の廊下に見えたのは







━━━━━━━ドォンッ！！、ピカァッ！！



人影。



「……ひっ！」



その稲光が照らした一瞬、廊下の前方に誰かの影が見えた。




「だ、誰…？」




な、何あれ…。

驚き過ぎて体と声が震えて心臓がバクバク言ってる。






まるで、ホラー映画かお化け屋敷のようなその状況とその人影に思わず悲鳴を上げて足を止めてしまった、が




「し、椎葉さん、ですか…っ？」

「…………。」




もしかして、椎葉さん？

今この屋敷にいるのは椎葉さんと私だけのはず。

だとしたら、あの人影は椎葉さんしか有り得ない。

そう思い人影に向かってそう問いかけたが、返事が返ってこない。