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Dolls…
第10章 美しき獣
「あ、あの…」
━━━━ドォォンッ!!ゴロゴロ…
私とはまだだいぶ離れた位置に立ち竦むその人影。
私の問いかけに答える事もなく、そこに立ち続けている。
不気味な雰囲気のその人影を見た瞬間、私は思い出した。
椎葉さんなら、真っ先に私の元へ駆けつけて来る。
なのに、あの人影は微動だにせず私を見つめ続けてる。
あれは…
あの人影は…、椎葉さん…、じゃないっ!
椎葉さんじゃないっ!
そう気づいた瞬間、その人影は私に向かって走り出してきた。
「やっ、きゃあああぁぁぁぁぁっ!!」
私は思わず悲鳴を上げて、今来た道を逆走するように走り出した。
何よ、あの人は…っ!
椎葉さんじゃない、あの人影。
まさか、幽霊……っ!?
私の問いかけに答える事もなくただそこに立ってるだけの人影。
走りながら後ろを振り返ると、その人影は物凄いスピードで私を追いかけている。
その風貌は、パーカーに付いてるフードを目深にかぶりこの雨に打たれたかのようにびしょ濡れだ。
この暗闇の中でパーカーを目深に被ってるせいで顔は見えないけど、変質者であることに間違いはない。
「はぁ、はぁ、はぁ…、嫌っ!来ないでっ!!」
息を切らしながら、これ以上ないくらいに全力疾走してるのに、その人影は物凄いスピードで私に追い付こうとしている。
このままじゃ捕まってしまう…。
幽霊なのか、生きてる人間かはわからないが、とにかく怖い。
捕まったら、殺されてしまう……っ!?
ビチャビチャと、びしょ濡れであろうその人影の足音が背後から迫ってくる。