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Dolls…
第16章 誘惑の果て
「ご、ごめんなさい!盗み見するつもりはなかったんですけど、怒鳴り声が聞こえてきたから、何かあったのかと…」

あせあせと言い訳する私に椎葉さんは"ハァッ…"と溜め息をつき呆れたような表情を浮かべた。

奈々さんの時といい、偶然とは言え2度目の盗み見だ。

椎葉さんが呆れるのも無理はない。


すると、そんな私と椎葉さんの間を縫うようにして


「なぁ、秋人。その子誰?」

さっきの男性の声が聞こえた。

玄関ホールからこちらに向かって話しかけてるようだ。


「…お前には関係のない子だ」

「えぇ!何だよ、それ。俺にも紹介しろよ!」


そう言ってその男性は椎葉さんの後を追うように軽やかな足取りで階段を駆け上がって来た。

そして、椎葉さんと並ぶように私の目の前までやってきたその男性。



「初めまして。安藤 尚人って言います。秋人とは腐れ縁の幼馴染みです」

-あんどう なおと-さん、か。

椎葉さんの幼馴染み…?

椎葉さんの事を名前で呼び捨てにしてるし、さっきの口調も慣れてる感じだったし

幼馴染みと言われれば納得が行く。



安藤さんと名乗ったその男性は再び私に笑顔を見せてくれた。

近くで見るその笑顔は、まるでお日様の光を沢山浴びた向日葵のように明るくて

暗闇に慣れてる椎葉さんが嫌がるのも無理はないと言った笑顔だ。

その横で椎葉さんは髪を掻き上げながらバツの悪そうな表情を滲ませている。


「あの…、水野 椿です…」

「へぇ。綺麗な名前だね」

「えっ!?」

意表を突かれたようなその言葉に私の顔が真っ赤に染まった。

別に私の事を誉められた訳じゃないしお世辞だってわかってるけど

"綺麗"なんて言われたの、生まれて初めてだ。




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