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Dolls…
第16章 誘惑の果て





暫く歩き南側の角部屋に到着。

ドアを開けるとそこは、私の部屋と同じぐらいの広さの客間が現れた。

相変わらず、どこの部屋も広いな。

「ここです」

「ありがとう、椿ちゃん!何回も来てるんだけどさ、山奥だと室内に入った途端に東西南北の方向がわからなくなっちゃって」


…確かに、窓から見える景色は全部一緒で辺りは一面、木や山々ばかり。

夕方になり太陽の沈む方向でやっと方角がわかる。

田舎育ちの私にとって、木々に覆われた山奥でも何と無く方角はわかる。

田舎で培ったある種の能力だ。


安藤さんは室内に入ると、中に置かれてたソファに腰をかけた。

ソファの他にはベッドとクローゼットがあるだけ。

広さはあるけれど、何とも生活感のない殺風景な部屋だ。


「夕食の時間になったら呼びに来ます」

「お構い無く。ダイニングの場所ぐらいならわかるから」

「そうですか」


安藤さんは私にずっと笑顔を見せたまま。

その明るい笑顔に私の心は少し軽くなった。


「…それじゃぁ、私はこれで」

「え?もう行っちゃうの?もっといろいろ話したかったのに」


これ以上喋ると何かボロを出してしまいそうな気がした。

椎葉さんの事を探ろうとして、逆に私の事を探られてしまう。

私が椎葉さんの事を知りたい以上に、この人からすれば私の存在も怪しいものだ。

「私は部屋でやらなきゃいけないことがありますから…」


椎葉さんが買ってくれた服を試着しなくてはならない。

ディナー時に着て行かなきゃ椎葉さんは不機嫌になる。

っていうか、安藤さんが来ててもあの服を着なくちゃいけないのかな?



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